かま猫はもうかなしくて、かなしくて頬のあたりが酸つぱくなり、そこらがきいんと鳴つたりするのをじつとこらへてうつむいて居りました。宮沢賢治「猫の事務所---ある小さな官衙に関する幻想」より。
事務所の中は、だんだん忙しく湯の様になつて、仕事はずんずん進みました。みんな、ほんの時々、ちらつとこつちを見るだけで、たゞ一ことも云ひません。
そしておひるになりました。かま猫は、持つて来た弁当も喰べず、じつと膝に手を置いてうつむいて居りました。
たうとうひるすぎの一時から、かま猫はしくしく泣きはじめました。そして晩方まで三時間ほど泣いたりやめたりまた泣きだしたりしたのです。
それでもみんなはそんなこと、一向知らないといふやうに面白さうに仕事をしてゐました。
その時です。猫どもは気が付きませんでしたが、事務長のうしろの窓の向ふにいかめしい獅子の金いろの頭が見えました。
獅子は不審さうに、しばらく中を見てゐましたが、いきなり戸口を叩いてはひつて来ました。猫どもの愕ろきやうといつたらありません。うろうろうろうろそこらをあるきまはるだけです。かま猫だけが泣くのをやめて、まつすぐに立ちました。
獅子が大きなしつかりした声で云ひました。
「お前たちは何をしてゐるか。そんなことで地理も歴史も要つたはなしでない。やめてしまへ。えい。解散を命ずる」
かうして事務所は廃止になりました。
ぼくは半分獅子に同感です。
沖縄防衛局とか、沖縄県とか、那覇市とかにも、泣いているかま猫たちがいるに違いない。こんな事務所や会議室で、ぶ厚いファイルをひっくり返しながら大切なものを壊す決定が次々と下されている。でも金色のたてがみを持つ獅子は、到来しないから、おとなたちが大切なものを守ろうと頑張っている。
新沖縄子どもを守る会blog
沖縄オルタナティブメディア「久茂地公民館解体を止める座り込み現場中継(4月6日)」「戦後、貧困にあえぐ沖縄の子どもたちを支援しようという思いと寄付金で建設された少年会館を、那覇市が一方的な財源運用のために撤去解体する工事に、3日着手した。このことに抗議する市民が解体阻止のための座り込みを始めた。」