参照すべき文章の典拠も紹介されていて勉強になります。
本家サイトでは文書がscribdで公開されています。
扱いにくいばあいは、ということで以下にテクストも貼り付けたよ。
2012年9月27日
沖縄・生物多様性市民ネットワーク
沖縄県議会議長 喜納昌春殿
やんばる高江におけるヘリパッド建設に関する陳情
琉球諸島のなかでも、特に生物多様性の豊かな自然環境が残されているやんばるの森。 そしてその森に囲まれるように人々が暮らす東村高江の集落。現在そこでは、日本政府に よる米軍のためのヘリパッドの建設が、住民や県民の建設反対の声を無視し、「座り込み」 の人々や建設事業者を危険に晒し、貴重な自然環境を破壊しながら強行されています。
沖縄県は、このヘリパッド建設を、1996 年のSACOの合意に基づく北部訓練場の過半部分の返還の条件であり、沖縄県の基地負担の軽減につながると認識し、「容認」の立場を取 ってきました。しかし、集落を囲むように新たに 6 つのヘリパッドが建設されることは、 高江の住民や東村の村民にとっては、基地負担の集中であり、危険の接近以外のなにものでもありません。この状況については、国連人種差別撤廃委員会も懸念を示し、日本政府 に対して 2012 年 3 月 9 日付けで書簡を送り、日本政府に説明を求めています(参照 1)。
また沖縄県は、沖縄へのMV-22オスプレイ配備には反対の立場をとりながらも、2012年4 月に米軍が提出した「環境レビュー」において示された、オスプレイによる建設中のヘリパッドの使用について(参照2)、「オスプレイだけが使用するものではない」という認識を もって、ヘリパッド建設を容認しています。しかし、現在、普天間に配備されているCH-46E の代替機であるオスプレイは、最終的にはCH-46Eと同じ機数の24機の配備が計画されており、その数は他のどの機種のヘリコプターよりも圧倒的に多い数になります(同参照)。沖縄県の「オスプレイだけが使用するものではない」という論理は非常に弱く、この論理に基づいた沖縄県の容認の姿勢が、オスプレイ配備自体の容認と日米両政府にとられかねないという懸念を沖縄県民は持っています。
また沖縄県は、2011年6月6日に日本政府から普天間飛行場へのオスプレイ配備の通知を 受け、日本政府に対し質問状を送り、配備反対の姿勢を表明し続けるなど、評価できる対応を行っていますが、沖縄県のオスプレイ配備に対するそれまでの取組みは、情報収集があまりにも日本政府に依存したものとなっており、それが日米両政府による配備の強行を可能にさせている一つの要因だとも考えられます。
例えば、今回の「環境レビュー」の英語版に記載されているReference (参考文献)には、2010 年9月にボーイング社により公刊された北部訓練場を含む沖縄へのオスプレイ配備に関わる用地評価の調査報告が記載されており(ちなみに日本語版では、Referenceの部分は訳されていません)(参照3)、沖縄県が日本政府の「米国から正式な通知を受けていない」ことを鵜呑みにしている間にも、オスプレイ配備に向けての米軍の調査は沖縄県において着々と行われてきたことを示しています。沖縄県は、なぜこのような重要な情報を独自に収集・ 分析し、対策をとってこなかったのか、これからも基地問題/基地に関する環境問題の情報収集・分析を日本政府に依存するつもりなのか、県民に対しての説明が求められていま す。
さらに沖縄県は、琉球諸島の世界自然遺産指定に向けての取組みのなかで、やんばるの 森を重要な箇所と位置づけていますが、世界自然遺産指定に重要な役割を果たす世界国際 自然保護連合(IUCN)が、このヘリパッド建設に関して日本政府に対して出した二度の勧 告に対して(参照4と参照5)、沖縄県としての見解を示すこともなく、適切な対応をとっ てきたともいえません。IUCN勧告は、ヘリパッド建設計画への懸念を示し、ゼロ・オプション(建設なし)を含めた環境アセスの実施と、やんばるの森に生息するノグチゲラやヤンバルクイナの保護を求めています。
また2010年に日本が議長国になり開催された生物多様性条約第10回締約国会議において も、国内外の75のNGOが「CBD-COP10開催国日本の開発行為に対するNGO共同宣言」を行い、 ヘリパッド建設計画の見直しを求めています(参照6)。ゼロ絶滅連盟(世界20カ国、68 の研究機関やコンザベーション・インターナショナルなどの環境保護団体で成るthe Alliance for Zero Extinction, AZEは、世界の最優先保護地587カ所の一つとして、やんばるの森を選定しています(参照7)。琉球諸島の世界自然遺産指定に向けた沖縄県の取組みのなかで、このヘリパッド建設の問題をどうするのか、IUCNの勧告にどう応えるか、沖縄 県の明確な対応が求められています。
以上を踏まえて、沖縄県が以下の事項を実現して下さるよう陳情致します。
記
1)東村高江におけるヘリパッド建設とオスプレイ配備との関係をどのように認識している のか、説明して下さい。
2)東村高江において建設中のヘリパッドが、オスプレイを中心に使用されるとするならば、 建設に反対し、日米両政府に建設中止を求めるのかどうか、回答して下さい。
3)世界自然遺産指定に向けての取組みのなかで、東村高江におけるヘリパッド建設をどの ように認識しているのか、また IUCN 勧告をどのように捉えているのか、そしてこれから どのように対応していくつもりなのか、説明して下さい。
4)沖縄の生物多様性豊かな自然環境を保全し、持続的に活用し、その恵みを県民が平等に 享受できるよう、米軍基地に関わる環境問題の情報収集・分析の能力の向上、日米両政府 との交渉力の向上、また IUCN 等の国際機関との積極的な連携を行って下さい。
5)東村高江におけるヘリパッド建設計画の見直しを、日米両政府に求めて下さい。
参照 1 国連人種差別撤廃委員会からの日本政府への書簡 (2012 年 3 月 9 日付け)(添付)
原文 http://www2.ohchr.org/english/bodies/cerd/docs/CERD_Japan.pdf
和訳 http://okinawabd.ti-da.net/e3841753.html
参照 2 防衛省による仮訳『MV-22 の普天間飛行場配備及び日本での運用に関する環境レビュー最終版』
参照 3 Final Environmental Review for MV-22 at MCAS Futenma Operating in Japan (「環境レビュー」の原文)
http://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/07oshirase/kikaku/kankyourebyu/1environmental.pdf
参照 4 IUNC 勧告 2.72(添付)
英文 http://data.iucn.org/dbtw-wpd/edocs/WCC-2nd-002.pdf
和訳 http://www.nacsj.or.jp/katsudo/iucn/2000/10/1010-1.html
参照 5 IUCN 勧告 3.114 (添付)
英文 http://cmsdata.iucn.org/downloads/wcc_res_rec_eng.pdf
和訳 http://www.nacsj.or.jp/katsudo/henoko/2004/11/post-35.html
参照 6 「CBD-COP10・開催国日本の開発行為に対する NGO 共同宣言」
http://www.jelf-justice.org/prefecture-map/jucon-box.htm
参照 7 The Alliance for Zero Extinction(ゼロ絶滅連盟)による「やんばる」のサイトデータ
http://www.zeroextinction.org/sitedata.cfm?siteid=10781