新報とタイムスは、最初の報道で、それぞれの手法で過去の「沖縄における」米兵犯罪をリストした。さらに後日、それぞれの角度から、米兵による犯罪の統計を切り出し、矮小化する暴力に対抗する姿勢を見せている。新報は「日本全国の基地所在地」を全体として、沖縄での米軍人・軍属の犯罪が偏在的に多いこと、「公務中」として取り扱われていることが多いことを読む統計。タイムスは、「米軍」を全体とした性犯罪の統計と、届け出が氷山の一角であることを前提として推定される被害の深刻さと、それを米国防省が危機感を持って発表しているということを読む統計。
米兵による犯罪に抗議を行う沖縄に対して、一般社会での犯罪率と大して変わらないのではないか、とか、アメリカの国内水準で見れば大した問題と思われないのではないか、とか、あたかも「冷静・客観」を装ったような見解が述べられることがある。それらが、いかに比較すべき基準やコンテクストを失当しているか、被害者の声を矮小化する暴力に荷担するものであるかと、県内の2紙は問いかけている。
(米国防省の軍隊内における性的暴行に関する調査報告を報道した今年7月の新報の記事も改めて読み直したい。)
「米兵性被害1万9千人/国防総省が推定値1年間で『届け出の7倍』」『沖縄タイムス』2012年10月28日1面。