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20141022

政治家のことば、法律家のことば

◆シンポジウムから
シンポのまとめ記事を書けないまま、もう10月も下旬・・・。
去った9月5日、「違法な辺野古埋立を問う:「承認」の撤回/取消は可能だ!」シンポを開催しました(http://www.projectdisagree.org/2014/09/blog-post_7.html)。

その詳細なプレゼンテーションの内容が『けーし風』最新号の84号に掲載されていますので、ぜひお求め下さい。また、IWJがこのまとめ記事をつくっていました。ありがとうございます。
 このシンポの成果を踏まえて、以下の要請をしました。

沖縄県知事選挙立候補予定者
翁長 雄志殿
2014年10月10日
「合意してない」プロジェクト

要請書

 私たちは、2005年の「日米合意」を契機として、沖縄県内の大学関係者、学生、アーティストなど文化関係者に呼びかけ、その有志で「合意してない」プロジェクトというネットワークを通じて、辺野古や高江、普天間など沖縄の軍事化の問題に取り組んで参りました。本年の8月末、辺野古沖大浦湾での海底ボーリング調査強行に抗議する声明を出し、辺野古での座り込み行動や県民集会などに参加いたしました。名護市辺野古の米軍基地建設工事をめぐっては、仲井真県知事による公有水面埋立承認は合理性・正当性を欠いており、現在強硬に進められている工事によって、辺野古の海の環境は取り返しのつかない深刻な破壊を受けることは明らかです。また、ご承知の通り、北部訓練場の着陸帯工事についても、辺野古同様、SACO合意における「負担軽減」が実行されるどころか、オスプレイ配備を隠したまま強引に工事が進んでいます。残念ながら、高江の工事強行については2013年の「建白書」にも盛り込まれなかったのですが、世界自然遺産の候補地である北部やんばるの自然環境を破壊し、沖縄島の有数の水源地を危機に曝すもので、沖縄に暮らす者全員の生活にかかわる問題であり、多くの県民が憂慮するものです。
 私たちは、今回、沖縄県知事選挙に際し、ぜひ以下の点を公約に盛り込んでいただきたく、立候補予定者である翁長雄志氏に要請いたします。政策公約のなかにぜひとも反映させ、そして、一票を投ずる有権者の信託に応えてくださいますよう、要請いたします。

一、名護市辺野古沖大浦湾における新たな基地建設について、正当性のない公有水面埋立承認の取り消し、海の破壊を食い止めること。
一、普天間基地の無条件閉鎖・返還を進めること。
一、北部訓練場の着陸帯建設について、県の条例アセス手続きを満たしていない工事を認めず、やんばるの森の破壊を食い止め、高江の住民の生活環境を守ること。
一、北部訓練場の無条件閉鎖・返還を進めること。
一、普天間、辺野古、そして、高江(北部訓練場)が抱える問題は、米海兵隊駐留の問題としてひとつながりのものであり、数多くの人権事件を起こしている米海兵隊の撤退を求めること。
一、平和と共生社会を希求する県民一人ひとりの声に耳を傾ける県政をすすめること。
一、将来の世代に禍根を残さず、軍事基地に依らない平和な沖縄を目指すこと。

*「合意してない」プロジェクト 要請行動(代表) 
佐久本佳奈(琉球大学大学院)/波平百子(琉球大学大学院)/宮城未来(琉球大学)/新城郁夫(琉球大学)/若林千代(沖縄大学)




1ヶ月ほど前になる、9月26日のタイムスの社説を読み直しているところです。
http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=84204
「有力4氏は、辺野古移設問題について、「推進」「反対」「県民投票」「承認撤回」など、4者4様の公約を掲げている。違いは鮮明だ」と書かれていて、このとき、あれ、と躓いてしまった。その後の各候補者の発言の変遷は、それぞれの皆さんで追って頂くとして、言葉使いがただ混乱しているだけ、では済まされないのは、これまで何度も公約が反故にされてきた沖縄だから。微細な言い回しで退路を用意しているように見えることは、問題ではないのか。そう考えて、なにかまとめてみようと思ったらすごく時間がかかってしまった。

◆法律家のことば
 いったん承認されてしまった公有水面の埋立について、県知事の権限として、何ができるか。この立場表明に関係しているのが、「取消」か「撤回」かという言葉の選択で、これは「行政法」の世界のことば、ということになる(参照:wikipedia「行政行為」の撤回と職権取消の項)。

取消=そもそも前知事の承認は、間違っていたから取り消します。白紙に戻します。ということ。つまり、仲井真の埋立承認は違法だったと確認することである。

撤回=前の知事が承認したが、蓋を開けてみたら問題続出。私が新知事となったからには認めません。ということ。県知事権限の範囲であり、着任前の過去には遡及しない、つまり仲井真の埋立承認の是非は取りあえず棚上げということになるだろう。

IWJで金高望弁護士がインタビューに応えてキッチリ解説していた。これは非常に参考になる。

◆政治家のことば
昨日の翁長氏の政策発表が、今日の報道で採り上げられている。辺野古の基地建設について「承認取り消し・撤回も選択肢のひとつ」だとの発言があったようだ。ズバっと「取り消し!」と約束して欲しかったところだが、そうならなかった。背景に、国との訴訟の可能性について政治上の懸念が伺える。例えば、新報の9月30日の記事。仲井真県政のお抱え弁護士が「訴えられたら敗けるじゃろ」なんぞとアドヴァイスしていたらしいことを伝えている。

選挙公約を掲げておいて、当選したあとでちゃっかりそれを反故にしたり翻意したり守らなかったときの攻撃や批判と、達成に向けて尽力したが果たせなかったときの攻撃や批判は、全く意味が違うだろう。後者のケースを顧慮しているとしたら、政策方針の検討が続いているまま選挙戦に突入することの是非を、選対たちはいったいどう計算したのか。そして前者を危惧して発言を手控え言葉を選んでいるならば、そのような政治家のことばを振り回した挙げ句に薄っぺらい公約が何度も翻されることで生まれるアパシーは深刻の域に達する。

果たして、選挙における公約は、どのようなことばであるべきなのか。
定義はたぶんないのだろうけれど。少なくとも現時点で合意してないピープルのことばは「承認取り消し・無条件返還」である。

トリケシハカノウダ!