(*)タイムスの報道には、「清水署長は手続き上の事前協議が成立したため、確認した範囲を防衛局はいつでも伐採できると説明しつつも、「新たな伐採は中止してほしい」と要請していると話した」となっているので、「もっと切ってもいい」はさすがに誇張と怒られるかもね。
■あーあ、切っちゃった。元に戻せない。誰が責任取るの?
N4の工事で次々と木が伐採された後、とうとうN1まで。しかもN1作業道で起こっていることはもっと酷い。ダンプの前に立ちはだかる人のほうに正義がある。これ以上ダメだ、との意を強く持つためにも、酷いということをしっかり確認したい。前にまとめた、エセアセスが引き起こした結果として、さらに北部訓練場の強化案の問題として考えてみるために、三つの地図を並べてみる。
上手く並んだかな。
左から順番に、(1)(2)(3)と番号を振って出所は以下。
(1)平成27年度第7回沖縄県環境影響評価審査会資料
http://www.pref.okinawa.jp/site/kankyo/seisaku/hyoka/shinsakai/documents/h27_7th-shiryou.pdf
(2)ヤンバル典型種で予定地のメッシュ評価をした地図(2-73頁)
(3)N1地区の改変の程度を評価した地図(6-11-134頁)
いずれも「北部訓練場ヘリコプター着陸帯移設事業(仮称)環境影響評価図書」(2007年2月、那覇防衛施設局作成)を分析した「さい塾」のサイトから。
http://www.saijuku.jp/site/document_japan/index.html
(1)の地図は、N1作業道が明瞭に判る地図。この作業道の北端をN1オモテ(県道70号線と接している)、南端をN1ウラ(高江の農道と接している)と呼んでいる。東村と国頭村の村境の線に、おおよそ沿って続く古い山道を防衛局は「工事用道路」と称して、環境を改変せずに作業道にするのに数百名の機動隊を導入して着手した。
(2)の地図は、2007年2月のエセアセスから。最終的にヘリパッド予定地を絞り込んだ根拠資料のひとつ。森をメッシュに分割し、やんばるの貴重種をセレクトして順位を付け、どの種が出現したかでランキングをつけたもの。エセアセスではこれ以外にも基準を設けてランキングし、最後に「総合評価」を導き出しているのだが(その恣意性については後述)、この地図はその基礎資料のひとつ、ということになる。ちょっと判りにくいかもしれないけれど、N1予定地辺りと思われる緑に塗られたブロック(Dランク)の南北は、オレンジ(Cランク)とピンク(Bランク)に塗られている。今回、戒厳令状態を敷いて無断伐採した場所は、ヤンバル典型種の出現率の高い森だったということを示している。あーあ、やっちゃったねオキボ。
(3)で、どうしてこんなことになるのかという問題の根源がエセアセス。しかもN1作業道をアセスしていないというダブル詐欺に原因がある。それが簡単に判る地図のひとつとして並べてみた。N1の環境影響エセ評価が実施されたのが、着色されている範囲。「N1の予定地以外は改変しません」という体裁になっている。「砕石舗装」は、どこにあるのかも判らないくらい。しかも「林道」の北端と南端は、現在のN1オモテ、N1ウラまで達していない。エセアセスもしてない、ということがよく判ると思う。そして、その場所が、今、土足で荒らされている。
こんなメッシュで科学の意匠をまとわずとも、N1座り込みを体験した人はみんな知っている。ノグチゲラ、ヤンバルクイナ、アカショウビン、アカヒゲ・・・鳥たちの楽園なのだ。
■メッシュの恣意性と70号線東側
(2)のマップをもう一度眺めて欲しい。緑のブロックで分断されているが、海側にピンクとオレンジのブロックの固まっている場所がある。県道70号線、東村高江と国頭村安波のそれぞれの農地改良地に挟まれて奇跡的に残されたやんばるの貴重種のサンクチュアリ。島の中央脊梁地帯とはまた異なる、生物多様性のホットスポットと言うべき森だ。
予定地を絞り込む際のメッシュの恣意性については、「さい塾」が2011年に指摘している。シンプルに重要な点を指摘してくれている。ここではN4とGの恣意性について焦点化しているのだが、メッシュが何を重点評価するかという枠組みに疑問を投げかけることで、資料を読み直す姿勢は、N1作業道にも適用すべきだ。
さい塾「【高江】高江に関するさい塾の調査のまとめ」2011年04月06日
http://blog.goo.ne.jp/saypeace/e/354ecb2d3d8dbc5768f5d530d0c25568
そもそも、森の価値を総合的にランク付ける際の基準、枠組みへの疑義は、2002年の県知事意見(当時は稲嶺恵一知事)でも提示されていた。
「北部訓練場ヘリコプター着陸帯移設に係る継続環境調査検討書に対する知事意見について」2002年(平成14年)10月11日。
http://www.pref.okinawa.jp/site/kankyo/seisaku/hyoka/tetsuzuki/documents/iken-8.pdf
県道70号線東側、ここに新たなヘリパッドを使用したオスプレイの低空飛行と上陸訓練が集中することになる。N1座り込みテントからちょっと北上した場所にこの一帯を展望できるビューポイントがある。眺めたことがある人は思い出して欲しい。6基のヘリパッド計画は、高江の集落を標的にするだけでなく、このサンクチュアリを台無しにする。この一帯の高い価値を当初から認め主張してきたのは、やんばるの山の達人、玉城長正さんであり、奥間川流域保護基金運動の伊波義安さんであった。
散々使い果たして汚した環境をポイ捨てして、これまで殆ど未使用だった残りの部分を新たに破壊していこうという海兵隊の欲望は、とてもあさましいものに見える。那覇の都心部に暮らす県庁職員らは、県道70号線が「復帰処理」の積み残しであり、島の一周道という安全保障の点からも、最優先で返還対象とすべきだという感性をどれほど持っているだろうか。
高江を標的にするという問題だけではない。北部に対する格差の眼差しが、生物多様性のホットスポットをごっそり売り渡し、島の安全への感性を曇らせてきたのではないか。海水揚水発電所、まさか訓練場に「返還」したりしないよね、という危機感を募らせている人は多いと思う。県政の過去についての反省に立たなければと思う。
■世界遺産と訓練場の組合せは、もはや矛盾ではないのかも
書類作成自体が目的と化しているので、予算をつぎ込んで大部の文書が出来上がればよし。地元の人の意見に耳を貸さない役人と政治屋たちは、自分たちの作成した書類にすら価値を認めることができず、手当たり次第に損なっている。現在進行中のN1の伐採や砕石舗装は、まさにその典型と言える。
世界遺産候補を目指そうと語る人びとは、夢のある話をしている風情だが、実のところ非常に近視眼的利益しか見ていない。その目的のためには訓練場の存在に目をつぶり、抗議の声に耳を塞ぎ、米軍と日本政府の乱暴狼藉を黙認する以外に方法がないと考えているようだ。だが、この状況は、たとえ国立公園になり、保護林指定を受け、世界遺産認定されたとしても、米軍の訓練場が隣接している限り今後も続く。結果として起こっているのは、米軍訓練場のバッファーゾーンとして自然保護区域が活用されるという皮肉だ。
生物多様性を言祝ぎ、必要最低限の法制度を持ちながら、このような無法を行う国に、「世界自然遺産」の管理を行う責任など任せようもないし、世界から信頼を勝ち得ることもないだろう。北部訓練場の訓練激化を見ずに、半分返還=世界遺産しか語らない人たちは、国有林だろうが、自然保護林だろうが、戒厳令状態でなぎ倒していく日本政府の姿も、見なかったふりをするつもりだろうか。
■参考報道
「国、法軽視重ねる 県道に金網、協議せず伐採… ヘリパッド工事」『琉球新報』2016年7月29日 05:04
http://ryukyushimpo.jp/news/entry-325340.html
「森林管理署、伐採を事後容認 北部訓練場着陸帯工事」『琉球新報』2016年8月6日 05:00
http://ryukyushimpo.jp/news/entry-330364.html
「<米軍ヘリパッド>防衛局、伐採の事前協議なし テント撤去も法的根拠なし」『沖縄タイムス』2016年7月28日 05:01
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/54038
「<米軍ヘリパッド>沖縄防衛局、許可なく立木伐採 「事後申請」で手続き成立」『沖縄タイムス』2016年8月6日 09:25
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/56188
■参考チョイさん日記
【※参考チョイさん8月9日を追加しました】
→これで明解。N1オモテもウラもノ・パサラン、どっちがということではない。みんなで集合・散開を繰り返しながら張り切って止めて行きましょーう!
N1地区のヘリパッド工事には大型ダンプ630台分の砕石が必要---1日に15台入っても42日もかかる
2016年08月09日
http://blog.goo.ne.jp/chuy/e/ff47d08008e3d1b1b8d999cd9694671a
<緊急>N1裏テントの場所は、国有林ではない?---「錯誤」では済まされない。防衛局はテントを強制撤去できない!
2016年08月07日
http://blog.goo.ne.jp/chuy/e/b1f1e10a3d0c85fdeb7704eba79304fb
高江、沖縄森林管理署長も防衛局の違法工事を指摘---「事前協議がないまま、立木の伐採が行われている」
2016年08月04日
http://blog.goo.ne.jp/chuy/e/a11f74bb8a5801289c86cb7d73127c7d
また、防衛局の違法行為---沖縄森林管理署との立木伐採に関する事前協議を行わないまま道路工事強行!
2016年07月28日
http://blog.goo.ne.jp/chuy/e/87bbc0189374498fc8788fe606ea7fda