日本司法の歴史に汚点を残す辺野古の判決を翌日に控えて、そして高江と辺野古で海と森を真実守っている市民が弾圧されているのを知りながら、いったいどんな感性で「お目出度う」と言うことが出来たのだろう、と思う。タイムスの報道写真を見ると、ちゃっかりセンターにポジション取りしているのは、米軍のために自らの選挙基盤であるやんばるの海と森を破壊する計画に賛成したため地元選挙区で落選、比例復活した国会議員。農道の使用は身体を張ってでも阻止すると言ったのに、歩いて入るのはいいよとかいう矛盾の人、N1・G・Hのヘリパッドと付帯道路工事で村境の森を切り捨て、林道と皆伐で切り刻む山のゾーニングが成功して嬉しそうな人が、その両脇を固めている。ささくれた心では、もうそんな風にしか見ることが出来ない無残な写真だ。
国立公園、自然保護を夢のある美しい物語に閉じ込めておきたい人には、「自然保護じたいはいい話じゃない。どうして何でも批判するのか」と言われそうだ。でもそういう人はきっと「ディズニーは楽しいじゃない」とか言いそうだ。オリンピックも同じで、非政治に脱色しようとしても無理がある。
なぜなら、このお目出度い人びとが記者会見をしているのと同じ日に、さらなる無法な森林伐採の事実が発覚していたから。もはや違法とも言うまい。法律の遵守を認識出来る相手にしか、違法という言葉は意義を持たないからね。無法者による乱暴狼藉という前近代のような言葉が似つかわしい。自然林を無断で60本切ってもお咎めナシとした結果が、招いた悪夢のような出来事だ。奇天烈な「検討図書」とかモノレールとか、ハナからどうでもよかったんだ、この人たちには。この調子で、残土ロンダリングも追加で盛ってくるんじゃないか?
そのような日本という国に、沖縄の自然の守護を信頼して付託することが、どうして出来るのだろう。自治への希求はどこへいったのか。あ、「やんばる国」だと勘違いしたのかな。もう「やんばる国」でいいんじゃないか。
「国有林伐採、新ルートか/県提出書類に示されず」『琉球新報』2016年9月16日32面。
http://ryukyushimpo.jp/news/entry-357906.html
「伐採されていた場所はN1地区から通称「N1裏」に続くルートの中間付近から、検討図書に示されたN1地区からH地区に向けた工事用モノレール敷設ルート付近まで及んでいた。」
「7月に提出された検討図書には、資機材の運搬用として全長1.2キロにも及ぶ工事用モノレールのルート図が示されている。だが、今回確認されたルートは検討図書には記載されていない。」
「高江伐採さらに拡張/工事用道路確保/防衛局、県に説明」『沖縄タイムス』2016年9月17日29面。
「沖縄防衛局が工事を急ぐため、N1地区からH地区に向けた工事用モノレールの敷設ルートを、資機材運搬車両の道路に変更する方針であることが16日までに分かった。全長1.2キロルートを300メートル延長し、伐採幅も70センチから3メートルに広げるとしている。」
ところでタイムスで「国立公園」を検索すると次の記事が出てくる。2014年、ほんの2年前が遠い昔のことのように感じられるほど、毎日が衝撃の連続なので、もうみんな忘れたかもしれないから、ここで再確認しておきたい。国立公園すら、米国大統領の指図で右往左往し、米国の「国内問題」(政権と軍部の調整)のためにボツになるのが、日本の国立公園だ、という報道。
平安名純代・米国特約記者「北部訓練場に国立公園化案:クリントン政権検討/ヘリパッド移設障害に」『沖縄タイムス』2014年3月2日。
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/37296
「クリントン米大統領(当時)が2000年の九州・沖縄サミット(主要国首脳会議)への出席直前、米軍北部訓練場の一部を返還し、国立公園化する構想を検討していたことが2月28日、明らかになった。海兵隊側へ非公式に打診したものの合意に至らず、日本側には伝達されなかった。」
「サミットでの県民向けのクリントン氏の演説を推敲した文書では『基地の返還や縮小を願う沖縄の人々の希望を打ち砕くことは一切言うべきではない』と記述。国立公園化について『米政府として日本政府に協力を呼び掛けることを検討する可能性がある』としつつ、政権内で合意が得られていない段階であり、公式の場で『言及すべきではない』とくぎを指している。」
ところが、いざという事態になれば、米国は身を翻して「知らんぷりを決め込みますよ、でも締切は守ってね」という。国務省が報道への談話という形をとってリークする、いつものやり方なのだろう。
平安名純代・米国特約記者「高江工事への陸自ヘリ投入「日本の問題」 米、批判の転嫁懸念」『沖縄タイムス』2016年9月15日 07:23
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/62177
「沖縄の米軍基地問題に関わる米国防総省高官は13日、本紙の取材に対し「陸自ヘリ投入は日本政府の判断であり、米軍や米政府側が責任を問われるべきのものではない」と前置きした上で、「来年1月までに工事完了という目標を達成できるだろう。やはり安倍内閣は違う」と評価する。」最後のひと言など、内政干渉を通り越して意味不明だ。日本の国立公園を米国大統領がサミットの手土産にしようと画策したり、北部訓練場のヘリパッド建設がキャロライン・ケネディ米国大使の退任祝いの手土産だなどという観測報道まである。
そういえば、ケネディ大使は、自分の国の国立公園100周年を誇らしげにtweetしていたが(リンクは貼りません)、やんばる国立公園をお祝いしてはくれないのね。冷たいね。「お土産」はサプライズじゃなきゃ盛り上がらないから、お土産の準備が整うまで知らん顔して黙っておくのかな。12日には防衛省、13日には環境省を表敬訪問して大臣と会っていたのにね。話題に上ったのは、壊して構わないほうのやんばるの森のことだったのか。
やっぱり「やんばる国」だったら、少しくらい敬意を払ってもらえたかも知れないね。