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20161230

ジョン・レットマン「米軍が日本に土地を返還、だが沖縄は祝っていない」

 沖縄で起こっていることは、英文でどのように配信されているのか、理解した上で拡散したいし、沖縄からの発信を学ぶ機会にもなると考え、以下にジョン・レットマンさんの記事を翻訳してみました。どうぞご活用下さい。
 翻訳掲載を了承下さったジョン・レットマンさんとTruthout誌、そして写真家の島崎ろでぃーさんにこの場を借りて感謝します。--- 合意してないプロジェクト。

ジョン・レットマン「米軍が日本に土地を返還、だが沖縄は祝っていない」
『トゥルースアウト』2106年12月21日水曜日配信。
日本語訳:合意してないプロジェクト、2016年12月29日。

(出典)Jon Letman, “US Military Returns Land to Japan, but Okinawa Isn't Celebrating,” Truthout, Wednesday, December 21, 2016.
http://www.truth-out.org/news/item/38809-us-military-returns-land-to-japan-but-okinawa-isn-t-celebrating
(写真出典)島崎ろでぃーさんによる高江の記録は、ここから、他にも沢山見ることが出来ます。
(リンク)訳文中のリンクは原文に基づきます。

(写真キャプション)米国は沖縄島の熱帯林の大部分を返還するというが、隣接する森林地帯を代償に新しいヘリパッドが建設されている(撮影:島崎ろでぃー)

 キャロライン・ケネディ米国大使と米軍高官たちが日本の公人とともに、待望の土地返還式典に参加するという12月22日(日本時間)、米国は当代最大の資産返還を記すことになる。沖縄は、かつて琉球王国として独立し、1870年代に日本の一部となり、第二次世界大戦の後に米軍統治が1972年まで続いた末に、日本の施政権下に返還された。だが米国は事実上立ち去ったことは一度もなく、5万人の兵員のほぼ半数と最大規模の基地が、この日本領土の0.6%に集中してきた。
 さて、20年の交渉を経て、米国は沖縄島北部の自然林を大規模に返還するーーー米軍の性暴力、殺人、そして情けない飲酒運転事故などで台無しだったこの1年の末に迎えるちょっといい話として熱も入っている。そのようなお祝い気分で、しかし、抵抗心と悔しさがない交ぜになった気持ちがなだめられるはずもなく、そもそも自分たちのものである土地と引き換えに、さらなる土地と海が軍事化されるのを阻止するべく、沖縄の人々は闘っている。
 沖縄の翁長雄志知事がすでに出席を拒否している式典は、東京とワシントンが、日本の最南端の島々における大規模な米軍基地のプレゼンスの「負担を軽減する」努力を演出する好機とみなしているものだ。
 在日米軍のスポークスマンによれば、米国は9909エーカー(4000ヘクタール以上とちょうど言えるくらい)の起伏に富む二重の林冠に覆われた亜熱帯林を返還する。この部分は沖縄やんばるの森のうち殆ど人が住んでいない北側だ。結果として、米軍が排他的に管理する土地は17%の削減となる。
 1952年日米合意の下、やんばるの森の1万9000エーカー超が米海兵隊ジャングル戦闘訓練センターの使用に供された。
 部分返還の対象となるのは生態系上重要な森林で、何千という希少な固有種の動植物と生命線である水源地を擁する場所である。この返還交渉は、「沖縄に関する特別行動委員会(SACO)」の1996年報告に遡る。1995年に起きた3人の米兵による沖縄の12歳の女児のレイプによって高まった怒りに拍車をかけられたものだ。
 しかし、北部訓練場とも呼ばれる場所の約半分の返還は、米国が山間部の東と高江という村[ママ]近くに建設される6基の新しい代替ヘリパッド/着陸帯とアクセス道路を手に入れるという条件付きだった。
 新しいヘリパッドは、既に存在する22基に追加するかたちで、沖縄の人々が日本と海外の様々な場所からの支援者と共抗議・抵抗を続けているにも拘わらず、拙速に森林を伐採して造られた。地元の人の話によれば、12月の期限に間に合わせて完成させるため、建設は夜半に及ぶメチャクチャなスピードで推し進められた。新ヘリパッド反対を支援する抗議行動は日本各地でも続いている。
 9月に日本政府は、やんばるの1万7000ヘクタールを超える地域を新たに国立公園として指定し、2018年UNESCO世界自然遺産登録を目指している。

 ギブ・アンド・テイク・・・アンド・テイク

(写真キャプション)米海兵隊の使用に供するヘリパッド建設が、日本で最も生物多様性に富む地域のひとつである沖縄やんばるの森に、深い傷を残している。(撮影:島崎ろでぃー)

 沖縄のジャーナリスト屋良朝博によれば、日米政府は土地の返還を沖縄の人々への「純然たるクリスマスプレゼント」のように演出しようとしているという。だが、そのような描き方は偽善だと彼は言う。土地は、第二次大戦の惨状のなかで、沖縄の先住民族から日米によって盗まれたものである。
 1945年の沖縄戦で、四分の一から三分の一に上る島の人々が命を落とし、生き残った人々には、戦争と軍事主義への強い嫌悪がある。
 米軍が5000人の海兵隊員を沖縄からグアムに移駐しその足跡を減じたとしても、沖縄での新たな軍事施設の計画・建設は続いていると、屋良は指摘する。
 「もしこれが米国だったなら、海兵隊は新ヘリパッドの使用を許可されないでしょう」と屋良は言う。「なぜなら、新ヘリパッドは人間の生活のみならず数百もの絶滅危惧種がひしめく熱帯林のただ中にあるのです」。
 しかし在日米軍広報担当次官ジョン・セヴァーンズ少佐に言わせれば、この土地返還は、[これまで]日本に返還された土地の倍に相当する、日米関係の一里塚と呼ぶべき出来事である。さらに、セヴァーンズは、新着陸帯は「より少ない土地で我々が要求されている訓練をこなすための可能性を与えてくれる」ものだという。彼は、土地返還は、日本防衛の提供能力に影響を及ぼしてはならず」かつ「地域と米国本土の安全保障にいかなる影響を及ぼすべきでもない」と付言した。
 ヘリパッドのほかにも、米国は、沖縄本島近くにある小さな伊江島[誤リンクか?]に新たな軍事施設を建設し、新たな海兵隊航空基地を辺野古崎から大浦湾を埋め立てて建設しようと畳みかけている。日米高官たちは、新しい基地が、人口の集中する地域にある海兵隊普天間飛行場を閉鎖する要望に応える「唯一の解決策」だと言ってきた。
 いっぽう、沖縄の人々の抗議は高まり、「新基地反対」の叫びは徐々に「全基地閉鎖」の声へと変わりつつある。

海岸に墜落
(写真キャプション)米軍はハイブリッド・ティルトローター機MVー22オスプレイの2個大隊を2012年に沖縄に導入、しかしこの航空機は騒音と安全性への懸念から多くの反対に遭う。2016年12月13日、オスプレイ1機が沖縄北部に墜落した。(撮影:ジョン・レットマン)

 米国のプレゼンスの影響が依然として幅をきかせていることは一目瞭然である。12月13日、東京とワシントンが20年越しで整えてきた土地返還を準備しているというのに、論争の絶えないハイブリッド・ティルトローター機MVー22オスプレイが、沖合での上空給油訓練の最中に、給油管によってプロペラの翼に重大な損傷を受け、このダメージのため、辺野古新基地予定地からほど近い安部の海岸に墜落を余儀なくされた。米国が導入したオスプレイは2012年の配備以来ずっと沖縄の人々の抗議の対象となってきた。
 墜落の同日、着陸装置の故障というMV-22オスプレイに絡む二つ目の事故のニュースで、沖縄におけるオスプレイ訓練増加に対する恐怖は増大した。
 いずれの事故も死者はなかったものの、抗議者たちの懸念がまざまざと明らかになったのであり、米海兵隊は防御姿勢に立たされた。日本の内閣総理大臣安倍晋三は墜落を「遺憾」と言い、日本の防衛相は国内の全航空機の即時飛行停止を要求した。しかし、1週間も経たないうちに、オスプレイは飛行を再開した。
 米軍機の墜落は、沖縄では初めてのことではない。小学校大学その他への墜落を含む数々の航空機事故に苦しめられてきた。この9月には米海兵隊ハリアー戦闘機が沖縄近海に墜落した。直近の墜落事故にも拘わらず、在日米海兵軍司令官ローレンス・ニコルソン中将はオスプレイが「安定していて強力で頑丈な機体」であると言い、「[日米]同盟防衛の価値ある重要な役割」を担うものだと言う。
 報道会見でニコルソンは沖縄の懸念を理解していると言った。「了解している(I get it )」と彼は言う。「我々のオスプレイの安全な飛行、乗員の熟練、着実な成果を保証するため出来ることは全て行う」。
 オスプレイと新しい米軍提供区域の拡大に対して、世論調査は幾度となく大多数の反対を記録してきた。しかし支持層もまた存在しており、特に経済的利益の見地に立つ人々や、「オスプレイ・ファン・クラブ」のような軍隊ファンなどが挙げられる。

何を祝うべきというのか?
 海洋哺乳類保護を主導する「ジュゴン保護キャンペーンセンター」国際事務局長の吉川秀樹は、小さな沖縄島にとって4000ヘクタールの森の返還は積極的な意味のある展開だと言う。しかし、彼はまた、SACO合意が沖縄の人々の意志を棄却し、土地の返還を、生物多様性の豊かな森を破壊して住民に騒音と不安をもたらすヘリパッド建設と絡めたやり方に憤っている。
 日韓現代史を専門とするコネティカット大学歴史学教授のアレクシス・ダデンは、土地返還は、沖縄にとって恩恵とは程遠く、実際には「おとり商法(bait and switch)」と言うべきもので、反米感情を生むだけだと言う。ダデンによれば、沖縄の人々にとって米軍基地は盾ではなく標的なのだ。
 「何を祝うべきだというのでしょうか」と彼女は問う
 米国とその高官たちについて言えば、かれらはオバマ大統領から連邦議員に至るまで、人権侵害環境破壊の問題についてコメントを避けてきた。沖縄の闘いと米軍プレゼンスをめぐる沖縄ー東京間の対立について応答を手控える典型的な態度は、ハワイイ選出連邦議員のトゥルシー・ガバードに見られる(彼女は下院外交委員会、軍事委員会の両方に席を得ている)。彼女は言う。「むろん、米国政府は関与するつもりはありません」。

ジョン・レットマンはカウアイ在住のフリーランス・ジャーナリスト。アジアー太平洋地域の政治や人々、環境について執筆している。Twitterフォローは@jonletmanまで。